製造業の管理職の難しさと、トップの「志」の大切さ

製造業での管理職というポジションはとても難しいと思います。ここでいう製造業とは、このコラムでは設計をする会社のことをいうことにます。そして、管理職とは課長以上のことです。そして、職場は設計部門の場合です。

設計部門は一般的に、設計者を何年か経験して30歳後半〜40歳過ぎになると、課長になっていく人が出てくると思います。つまり設計者がマネジメントをすることになります。しかし、設計スキルとマネジメントスキルはもちろん全く違います。マネジメント研修など数日をかけて行いますが、もちろんそれでマネジメントができるようになるわけではありません。課長レベルでしたら、それでも問題はあまりないかもしれませんが、部長、それ以上になるとどうでしょうか?

以前私の会社の知り合いに、大学では経営を勉強し就職してからは管理部門で働き、50歳を過ぎで部長より上の役職に就いた人がいました。その人は「設計者で40過ぎからマネージャーになった人と、ずっと経営を勉強してきた私が同スキルってことはないんだよね」と言っていた記憶があります。

私の前職も、ずいぶん昔から技術系とマネジメント系の昇進ルートを若いうちから別ルートにして、仕事は全く違うけどスキルが同程度のレベルであれば、役職と給料は同レベルにするシステムの導入を何回かチャレンジしていた記憶があります。しかし、いつも有名無実みたいな感じになって終わってしまった記憶があります。

昔は、やはり課長になって出世していくのがステータスみたいなものがあったり世間体もあって、多くは管理職への昇進を望んでいましたが、もうここ20年くらいは管理職の魅力がなくなってきて、技術職にとどまる人が多くなってきています。

特に設計仕事は、スキル的に管理職が口を挟むには難しい領域が多くあるので、管理職は主にコストなど事務的な内容だけ確認して、ほとんどは”承認”するしかない単純事務業務になってしまっている場合が多いです。給料は若干良いけど仕事内容に魅力がない、また技術仕事は一度離れてしまうと元に戻りにくいこともあります。つまり、将来を見据えると、大切な”手に職”を失ってしまうことになりかねなく、それが不安なのです。よって、管理職はさらに減り、部下の増えた管理職はさらに単純な事務業務が増えてくるというサイクルです。

製造業の設計をする会社では、この悪循環をどうすれば打開できるのかをずっと昔から考えていました。技術者が課長からさらに上に行っても、「設計上りは経営が分からないからなぁ〜」と言われ、管理系やマーケティング系が上に行くと、「技術が分かってないからなぁ〜」と揶揄されます。

もっと上の社長レベルの話ですが、昔のソニーは技術の井深さんと経営の盛田さんの両輪、ホンダも技術の本田さんと経営の藤澤さんの両輪といわれました。ところで、スティーブ・ジョブス氏やイーロン・マスク氏はどうなのでしょうか?

管理職、経営者には、業種によってもそのいろいろな適任者があると思いますが、トップに立つ人に大切なことは「志」をしっかり語れることだと思っています。自分の課、部、会社は何を市場に生み出して、世の中をどうしようとしているかとう「志」です。課レベルですと、こんなに大袈裟でなくても良いとも思いますが、基本は同じです。

日本の技術者系の人はこれがとても苦手です。作れば売れる時代を経験した人や、納入先が系列化していて営業をしなくても売れてた会社の人、そもそも口下手は技術者、さらには日本人そのものが控えめアピール下手であるということが、現在の日本の製造業が他国から遅れをとっている一つの原因と思っています。

中国人はよく喋ります。80点のものを120点でアピールします。一方、日本人は100点のものを控えめに80点でアピールします。スティーブ・ジョブス氏やイーロン・マスク氏も雄弁に語ります。ちょっと内容が製造業の管理職の難しさから、経営者の「志」の大切さにスライドしてしまいましたが、日本の製造業の弱点がこのようなところにもあるのではないかと思っています。

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