車のカーボンニュートラルへの近道は何?
車とカーボンニュートラルの話はとても込み入り始めています。車視点では、車メーカーの方針と国の販売できる車の規制があります。発電視点では、グリーン電力設備メーカーの開発レベルと国の発電方針があります。それぞれは、関連して決まってきているものもあると思いますが、それぞれにメーカーと各国の思惑が絡み、複雑さを増しています。
車メーカーの方針では、アメリカ(テスラ)と中国はEVで世界のシェアを取りたく、そして国の規制でもそれを後押ししたい。発電では、インドをはじめとする新興国はクリーン電力を作る発電設備の資金はないから規制を緩めて欲しく、中国は石炭を輸出して儲けたいし、また日本はグリーン電力設備の開発が遅れているから、この2国も規制を緩めて欲しい。ヨーロッパ(EU)は風力発電などのグリーン電力設備の開発を強力に勧めていて、各国はそれらの輸出をしたいからから規制は厳しくしたい。COPはこれらの思惑をまとめるのに本当に大変です。カーボンニュートラルに向かう最も近道の方策を決めるのではなく、各国の思惑を調整する場になってしまっています。利権団体の思惑を調整する日本の政治と同じです。民意に沿った方策になることは難しいでしょう。
この中で、一番気になるのはもちろん日本です。車視点では、トヨタがカーボンニュートラルを世界レベルで計算するとしばらく(20〜30年くらい?)の最も近道はハイブリットの併用だと言っているのに、その意を組めない政府。そしてグリーン電力設備の開発を遅らせてしまった政府の方針です。そして最も悪いのは、なにより明確なロードマップを示さないことだと思います。COP26で閉会間際のインドの発言後に、政府から「インド発言に対し、日本は何も発言しないことが適切な対応だった」とのコメントがありましたが、賛成も反対も言わないのは何も方針がないからです。化石と言われても仕方ありません。
とにかく世界的にはEVの一本化を目指しています。 “EV一本化”を目指す根拠は、「炭素の出ない発電(グリーン電力)」+炭素の出ない車(EV)」が最終理想系なので、それを目指すべきでしょうというものです。
しかし、トヨタは「ちょっと待って」と言っています。トヨタの「ちょっと待って」の理由は、炭素は“発電”と“車走行”だけで排出されるのではなく、EV車やその部品を作る過程でも排出されるので、そこも計算に入れるべきでしょうというものです。その中でも、EV車のバッテリーの製造する過程では、大量の炭素を発生するし、新興国はまだまだクリーン電力を作ることはできないし、それらを視野に入れて計算すると、しばらくはハイブリット車の併用で行くのが、世界的にみるとカーボンニュートラルへの最も近道と言っているのです。
私は、どちらも正確には予測と計算ができないので、どちらが本当にカーボンニュートラルへの近道であるかは、現実誰も分からないと思います。
もしCOPに強力な強制力があったとして、「グリーン電力+EV」しか認めませんと宣言したら、それは、とても早いスピードで世の中は変化して行くと思います。内燃機関が100年続いた車が、車を作るテスラのイーロンマスクが現れ、車を買う中国が電動化規制を発すれば、ここ数年で世界が一気に電動自動車に変わってきているのを私たちは目の当たりにしています。推進力と強制力はイノベーションを起こします。それを考えると、「グリーン電力+EV」が、カーボンニュートラルへの最も近道なのかもしれません。
一方トヨタの主張する、EV車やその部品を作る過程での炭素排出量も計算するのはとても大変な作業で、正確な数値は実際に出てこないと思います。この部品を作るには、この設備を40秒使って、その設備の使用電力は◯◯Wで、部品の輸送にトラックを使って、などの計算を実際に行うことはとても大変な作業であり、さらにそれを全部品メーカーに算出してもらうことも大変な作業です。また、国やメーカーによって計算方法が変わることもあるでしょう。よって、ある程度はある定義を行なった概算にしかならないと思います。
話はちょっと逸れますが、炭素の排出量を製品や部品を作る過程から計算するのではなく、実際に排気ガスを排出している企業で計算するのが簡単で正確だと思います。
なぜそうしないのかは不思議です。炭素税とかの導入の話があるからでしょうか?排気ガスの出口、炭素の比率、排出量を調べれば良いのです。製品、部品の製造過程から逆算するのはどうしてなのでしょうか? このようなことから、「グリーン電力+EV」の方がカーボンニュートラルへの最も簡単な近道かもしれません。でも、COP26の閉会間際のインドの主張によって「段階的な削減」になったということは、「グリーン電力+EV」への強制力が弱まったことになるので、やはりトヨタの考え方も大切になるし、、、よって、今の段階での正解はないと思います。