トヨタが生産技術の機能と製造を一体化、の本当の意味

つい最近、トヨタから下のURLの記事の内容が発表になりました。

▶︎トヨタが生産技術の機能と製造を一体化、狙う効果は?

https://newswitch.jp/p/31804

パッと読んでしまうと、「ふ〜ん、そうなんだ」くらいにしか思わない人がほとんどだと思いますが、これは日本の製造業にとってとても重大な内容であることを理解する必要があります。日本の製造業の大転換の時期が迫って来ているのです。

簡単に説明します。まず、製造業ってどんな企業があるか、お分かりでしょうか?主に次の3つがあります。

1)設計するメーカー(以下、設計メーカー)
2)部品を作るメーカー(以下、部品メーカー、日本では町工場ともいう)
3)製品に組み立てるメーカー(以下、組立メーカー)

私の前職のソニーでお話すると、1)はソニー(株)です。2)は、日本ではいわゆる町工場と言われる部品メーカーです。3)は例えば中国のフォクスコンのような組立専門メーカーになります。2)は町工場と言いましたが、中国に組立メーカーがあると中国の部品メーカーになります。そうなると、以下のようになります。

1)設計メーカー:日本にあるソニー(株)
2)部品メーカー:中国にある企業
3)組立メーカー:中国にある企業

2)と3)は、最近は家電のほとんどが中国になっており、タイやマレーシアの場合も多いです。ポイントは2)と3)は同じ国になるということです。部品は組立メーカーに送られて組み立てられるので、同じ国の方が輸送費は安くなります。現地で入手不可の部品や、その国では難易度の高い高品質の部品は日本などから輸出されます。

2010年以前は、日本には多くの組立メーカーがありました。しかし、組立作業は人件費が多くかかるので、2010年以降は人件費の安い中国へその作業は移管されていきました。中国にある有名なフォクスコンなどの組立専門メーカーや、日本の設計メーカーが中国に合弁の組立メーカーを設立して、そこで組立作業が行われることになったのです。

以前は、基本的に組立メーカーは設計メーカーに系列化されており、組立メーカーの製品は必ずその系列の組立メーカーで組み立てられていました。さらに、部品メーカーも多くは系列化されていました。

しかし、人件費の問題で組立メーカーは系列化から外れ、中国の組立メーカーにその組立作業が移管されていったのです。ソニーには以前30以上の組立メーカーが国内にありましたが、現在は1桁の数しかありません。そして、中国の組立メーカーが台頭し始めると、もちろん部品メーカーも中国に移管されていきます。このようなことから、日本の部品メーカーは仕事がなくなり、高齢化の問題もあり、現在もどんどん廃業していっているのです。

トヨタの組立メーカーもトヨタに系列化されています。そして、部品メーカーも系列化されています。自動車は組立の難易度の高さと設備の問題から、そう簡単に誰でも組み立てられるものではありません。よって、フォクスコンのような組立メーカーはありませんでした。しかし、EVになり構造がシンプル化、そしてプラットフォーム化されてくると、系列化された組立メーカーでなくても、組立作業ができるようになってきたのです。実際に、既に中国には自動車の組立専門メーカーが現れ始めています。

トヨタが生産技術部門をトヨタ本体から切り離すということは、自動車がシンプル化、プラットフォーム化したためトヨタ本体が生産技術を開発するまでもないという意味と、組立メーカーにトヨタの系列化から外れて自立してもらい、車種や(海外)市向けよっては、中国にある組立メーカーに組立作業を移管するということを意味しています。トヨタの系列化の組立メーカーの人件費は高いです。人件費が安くて、生産技術が優れた組立メーカーがあれば、組立作業はそこに移管するということです。ソニーやその他の家電業界と同じ道を歩み始めるということになります。

EVが現れ、自動車がスマホ化し(そんなに簡単とは思えませんが)、EV参入メーカーが増え、競争は激しさを増しつつあります。トヨタはEVなどの次世代自動車の研究・開発・設計に専念して、世界の自動車メーカーと競争に勝つための大きな決断をしたのだと思います。また、系列化している組立メーカーと部品メーカーにも、自立してもらい国際競争力を高めて欲しいということを示唆しているともいえます。

ここで大きな問題となるのが、自動車部品を作っていた日本の部品メーカーの存続です。仕事が中国に移管されていく可能性が大きくなり、ますます仕事が減っていくことになります。組立メーカーも生産技術部門を移管され、トヨタの系列化から外れ海外の組立メーカーと競争しなければならなく大変になります。

しかし、現在の潮流なので仕方ありません。とても厳しいですが、この大企業トヨタの決断は日本の製造業の決断にも等しいので、この記事は大きな意味を持っていることになります。

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