「単品もの」と「システムもの」の違いをガラパゴス携帯から学ぶ

中国は社会主義市場経済を導入しています。1992年にこれが提唱された頃は、中国は社会主義に行き詰まりを感じて、競争による発展を促す民主主義の市場経済を導入したいけど、民主主義とは言えないので“社会主義市場経済”とした、くらいにしか思っていませんでした。しかし、今の中国をよく見てみると、この“社会主義”と“市場経済”を二刀流のように上手く使っていると思います。その典型はキャッシュレスシステムのAlipay(アリペイ)とWeChat Pay(ウィーチャットペイ)の2本立て、それと最近の塾禁止令です。

あらゆるモノやサービスには、“単品もの”と“システムもの”の 2つがあると思います。”システムもの “はこの言葉が適切か分かりませんが、他に良い言葉がないので私は“システムもの “と言っています。

“単品もの”としては、モノでは洗濯機、サービスでは筋トレジムのようなものです。誰もが違うメーカー、違う方式の洗濯機を購入しても、また誰もが違う筋トレ方法や筋トレマシーンを使用しても何も不便は生じません。むしろ、選択肢がある方が良いです。

しかし、“システムもの”はどうでしょうか?その代表としてガラパゴス携帯といわれた日本独自の通信方式の携帯電話(モノ)や、サービスとしては現在のキャッシュレスシステムがあります。日本のガラパゴス携帯は、日本でしか使用できず不便だったので現在はもう存在しません。キャッシュレスシステムは、現在いろんな方式があって、この店ではPayPay、こっちの店ではd払い、さらにこっちではLINE Pay、楽天ペイと不便極まりないです。店舗はもっと大変です。それらを読み取る個別のリーダーやアプリなどが必要なのです。

つまり、単品ものは自由な競争のもとでさまざまな方式があっても何も問題はなく、むしろそれが発展や斬新なものを生み出していきます。しかし、システムものはそれを作る人と企業によって、種類があまりに多いと不便にしかなり得なくなるのです。

中には、最初は単品ものと思っていたが、システムものに変化していったというものもあります。昔のビデオシステムであるVHS-ベータはその典型です。個人がテレビ番組を録画して楽しむだけと考えていたところ、ビデオを知り合いと交換したり、レンタルビデオ屋が誕生したりしてきました。そうなると、世の中にVHSとベータの両方が存在することに不便が出始めてきたのです。“ビデオを見る”、“ビデオを作る”、また“ビデオ機器を作る”の全てに2通りが存在してしまい、全くのメリットがない世界になってきてしまったのでした。

モノやサービスができ始めた最初の頃は、さまざまの企業やさまざまな方式の競争がなければその品質や技術の向上はなくなってしまうので、多くの種類の競争は必要です。しかし、ある程度品質や技術が向上して飽和してきた頃には、それを見計って2〜3企業や2〜3方式に絞ることも大切と思います。また、前述した、単品ものと考えていたものが、システムものに変化していったときにも同じことがいえます。

あまりに多くの企業や方式が競い合っているのは、人の労働の無駄使いです。多くの人が同じような仕事をして、シェアの低かった方は結果的にその労働力は無駄になってしまうのです。もしかしたら、日本の労働生産性が低い原因はここにもあるかもしれません。

このような状況に対し、中国の社会主義市場経済は非常に効果的にはたらいていると思います。過去の一時期には乱立していたと言われているキャッシュレスシステムは、政府の規制によって2社に絞られてきたといわれています。よって、今はとても便利です。これらはさらに近い将来、デジタル人民元だけになるかもしれません。

塾禁止令も、日本だったら「塾時間を減らして、家族とコミュニケーションを」程度だと思います。今の働き方改革みたいな感じです。そして、実際に塾に長時間通った子供がやはり受験に合格することになり、有名無実なスローガンになるのです。

“単品もの”には自由競争、“システムもの”には政府の介入による規制によって、人の労働の無駄をなくして、世の中の便利さを向上させることが必要と思います。中国はこの二刀流を、社会経済至上主義のもと上手く利用しているのだと感じています。

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製品化のイロハ/中国ものづくり支援室 ロジ 小田淳

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